「今期は赤字なので経審も下がると思います」というお話がよくあります。
果たして、本当に【赤字=経審点ダウン】なのでしょうか。
経審で見ている利益
「赤字」ということは「利益が出なかった」ということを指していると思います。
一言で利益といっても、決算上はいくつかの利益があります。
- 売上総利益(粗利)
- 経常利益
- 営業利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
このうち、経審の点数に影響してくる利益は、
- 売上総利益
- 経常利益
- 営業利益
です。
シミュレーションしてみる
では、下記のような決算があったとします。
入ってくるもの | 出ていくもの | 利益 | |
売上 | 717,272 | ||
原価 | 555,685 | ||
売上総利益(粗利) | 161,587 | ||
販売費及び一般管理費 | 129,951 | ||
営業利益 | 31,636 | ||
営業外収益 | 14,387 | ||
営業外費用 | 2,589 | ||
経常利益 | 43,434 | ||
特別利益 | 0 | ||
特別損失 | 0 | ||
税引前当期純利益 | 43,434 | ||
法人税 | 14,310 | ||
当期純利益 | 29,124 |
この時のA業種の点数が859点だったとします。
仮に、本来原価ではなく販売費及び一般管理費に入るべき経費が10,000千円あったとし、それを適切に振り返ると、A業種の点数は861点と2点アップします。
このように、最終的な純利益が同じでも、出ていくお金がどの部分にあるのか、どの部分の利益がどれだけあるかにより、経審の点数は変わってくるのです。
そして、赤字=最終的な純利益がマイナスだった場合でも、点数が下がるとは限りません。こちらも、そのマイナスが生じた利益が売上総利益にあるのか、営業利益にあるのか、経常利益にあるのか、それとも更にその下の部分にあるのかによって、点数への影響が変わります。下がった利益が上のものであるほど、点数への影響が大きくなります。
原則は「本来あるべき場所にいれること」
当然ですが、点数を上げるために不当に操作することは許されません。
例えば、本来営業外費用に入るべきものを特別損失に持っていくとか、逆に特別利益に入れるべきものを営業外収益に入れるなどということは認められません。
しかし、どちらかというと多いのが、「本来あるべき場所に入れた方がもっと点数が上がるのに」というケースです。原価ではないものが原価に入っていれば売上総利益は下がるので、原価から省いて販管費など適切な場所に入れるべきです。特別損失に入れて差し支えないものを営業外費用に入れると、経常利益が下がってしまい、点数がマイナスになる方向に働きます。
税務上の財務諸表と建設業の財務諸表
経審を受ける前の決算変更届を作成する段階で、税務申告の際に作成した財務諸表から、建設業用の財務諸表を作成します。そのときは、ただ単に書き写すのではなく、適切な場所に数字を入れ込んでいきます。
税務申告上の財務諸表の正しさと、建設業用の財務諸表としての正しさは違います。
最終的な当期純利益は当然同じですが、内訳の利益がどうなっているのかが経審の時に気にすべきことです。そして、実態が税務上の数字の置かれている部分とは異なることもあります。その時は建設業用の財務諸表に作り替えるときに別の場所に置き換えます。すると、税理士さんが作成された財務諸表とところどころ異なる財務諸表ができますが、これで問題ありません。
細かいところまで点数アップに向けた対策を
建退共に入れば+21点、ISO登録があれば+7点といったように、分かりやすい点数アップではないため取り組みづらいのが財務内容の部分です。しかし、正しく作成することで点数が上がることがあります。
「正しく作成する」ということは、実際の在り方をしっかり財務諸表に反映させるということです。本来はもっと高く評価されるべき状態なのにそうではないのはとてももったいないことです。
財務内容をしっかり分析して、正しく評価される申請が出来るようにしましょう。