【経審FAQ】下請工事の土木一式・建築一式工事はあり得るか

経審の際によく問題となる「この工事は一式工事に該当するのか?」というテーマについてです。

 

経審では工事の裏付け資料を提出する

経審の申請をするときに、工事経歴書に記載した工事について裏付け資料を提出します。

上位5件だったり10件だったり行政庁によって異なりますが、神奈川県の場合は【金額順上位5件】となっています。※上から5件ではなく、金額順上位5件です。

工事の裏付け資料を提出する意味は、業種ごとの完成工事高が経審点に反映されるため、「工事経歴書に記載された工事を本当に行っていることの証明」であるわけですが、ときどき、工事経歴書の工事と、裏付け資料とが合致しているのか悩ましい場合があります。

大きく分けて2つ。

1つは、工事経歴書の業種と、裏付け資料の業種が合致しないとき。例えば、工事経歴書には塗装工事として「A邸塗装工事」となっているのに、裏付け資料として出された注文書を見ると「A邸シーリング工事」などとなっているとき。

この場合は、工事経歴書で出している業種の工事であることの証明として、契約書や注文書で業種が分からなければ見積書や内訳書を提出します。もし工事経歴書と実態がズレているなら、工事経歴書の作り直しが必要です。

※塗装工事と防水工事は、外壁改修工事の場合には両方行うことが多いので分けること自体が難しいことが多いです。しかし建設業法では1件の請負契約であれば全体としていずれか1つの業種の工事としてみることになっているため、工事の主たる目的や金額などから判断します。

もう1つは、土木一式工事あるいは建築一式工事に入れられている工事が、「本当に一式工事なのだろうか?」というケースです。

 

一式工事とは

一式工事とは何か?というテーマは経審に限ったことではありません。実務経験を証明するとき、許可取得後の毎年の決算報告をするときなどで同様の疑問が生じます。

そもそも、「この工事は建設業法でいうところの何工事に該当するのか」というのは、かなり難しいテーマです。

一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を建設する工事のことです。通常、一式工事は元請として施工されるものを指しています。

例示として、土木工事の場合は宅地造成工事、トンネル工事、橋梁工事など、建築工事の場合は新築工事などがあげられています。

しかし、すべての工事がこの定義にあてはめて考えられるわけではなく、実際にはこのような疑問が出てきます。

  • 建築確認申請をともなわない増改築工事は建築一式工事?
  • 一次下請ではあったが、下水道工事で一工区全体を一式で請け負って施行した場合は、土木一式工事?
  • ビルやマンションの大規模改修工事は建築一式工事?
  • 整地まで行う造成工事は土木一式工事?
  • スケルトンにして改修する場合は建築一式工事?

 

正解は

これらの疑問に対する正解は、実は一つではありません。許可行政庁により解釈と運用が異なる、というのが実態になります。

同じ法律で運用しているのに、行政裁量があるとはいえそんなことあって良いのか?と思いますが、実際に都道府県、各地方整備局で何を一式工事ととらえるかは異なっています。

 

神奈川県の場合

神奈川県の考え方を大方まとめてみました。

  • 一式工事は基本的に元請工事として施工されるもの
  • 下請工事の一式工事も工事の内容によっては認められる(下水道工事などで一工区全体を一式で下請する場合など、実態としては下請であっても一式工事になる場合がある

このように、神奈川県では下請工事でも一式工事と考えるケースがあり得ます。

実際に経審の申請をする際にも、土木一式工事や建築一式工事の工事経歴書の中に下請工事が記載されていることは多々あります。しかし裏付け資料の中で、その工事が本当に一式工事なのかを示す必要があります。その結果認められなければ、工事経歴書の作り直し(もちろん経審申請書も)となります。

 

関東地方整備局の場合

下記のように示されています。(令和2年4月版の手引きより抜粋。一部省略)

下請工事であっても、当該工事が「総合的な企画、指導、調整のもとに土⽊工作物(又は建築物)を建設する工事」に当たる場合においては、告示等上、一式工事と判定されることになりますが、告示等において記載されている「総合的な企画、指導、調整」については、一括下請負禁止規定等の兼ね合いから、⺠間工事における合法的な一括下請負のケースを除いては、下請け工事に関し、一式工事に該当する事例は、極めて少ないと思われます。但し、可能性としては低いものの、下請工事であっても、告示の条件を満たし、一式工事として判定され得るものが存在する可能性自体は否定できません。下請工事でありながら一式工事としての要件を備える事例があれば、当局までお問い合わせ下さい。

と、このように「下請工事の一式工事はほぼ無い」という見解です。該当しそうなものは個別に相談ということで、ハードルの高さが否めません。

 

行政庁ごとのルールを理解して判断を

このように許可行政庁によって考え方が違うということは、全く同じ工事を行っていても、その工事がどの業種で評価されるかが異なる可能性があることになります。それは経審点にも影響します。

弊社関与先様から「大臣許可か神奈川県知事許可かにより点数が変わるのはおかしくないですか?」というお話をいただいたことがあります。統一基準で申請をする経審であるにもかかわらず、解釈の違いで点数が変わるのは確かにおかしいことですね。

制度上の問題はあるにせよ、実際の申請にあたっては運用されているルールを理解したうえで、業種の分け方についてルールを作り、判断して用意をしていくしかありません。

各許可行政庁の考え方は微妙に変わっていくこともあります。神奈川県でも比較的厳格に考えられるように示された時がありました。この点は注意が必要です。

 

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