退職金制度の導入は、経審の加点項目の中でも特に大きい項目の一つです。加点を得るための方法はいくつかありますが、その中でも中小企業様での導入が最も多い「中退共」と「就業規則に定める退職金制度」をメインに解説します。
どのような退職金制度が加点として認められているのか
大きく2つに分類ができます。
- 退職一時金制度
- 企業年金制度
下記のどの方法を採用したとしても加点は同じで、P点換算(経審の最終的な点数)で+21点です。
1.退職一時金制度の代表例
中小企業の場合は上から順に多い印象です。(実際の数までは調べていませんのでご参考までに…)
- 中退共に加入している
- 就業規則に退職金制度の定めがある
- 商工会議所などの特定退職金共済団体に加入
2.企業年金制度の代表例
- 厚生年金基金に加入している
- 適格退職金年金契約を締結している
- 確定拠出年金制度を導入している
- 確定給付企業年金を導入している
中退共とは
中退共=中小企業退職金共済の略です。
事象主(会社)が中退共と退職金共済契約を結び、事業主が毎月の掛金を支払います。従業員が退職した際に、その従業員に対して中退共から退職金が直接支払われます。月々の掛金は従業員ごとに5,000円~30,000円の範囲で自由に設定できます。
口座振替ですし、一度加入の手続きをすればとても簡単に管理できる制度です。
一方、どんな辞め方をしたとしても「直接従業員に退職金が支払われる」ということが会社制度や方針と合わないことを理由に、好まれない方もいらっしゃいます。
中退共と建退共の関係
中退共と建退共は、経審ではそれぞれ加点になります。「どちらかに入っていれば加点となる」というのは誤りで、中退共だけに入っていれば+21点、両方に入っていれば+42点となります。したがって点数アップが必要ならばどちらの加点もしっかり取らなければなりません。
1人の人が中退共と建退共の両方に入ることはできません。事務や営業の方は中退共、現場に出る方は建退共というように分ける場合が多いですが、柔軟に考えて良いと思います。
以前中退共に入っていた方を建退共に移行(あるいはその逆)することもできます。それまで支払った掛金は蓄積したまま移行が可能です。
就業規則に定める退職金制度とは
このままですが、就業規則の中で自社の退職金制度を定める方法です。
中退共とは違って、例えば「何年以上勤めた場合に支給する」とか「こういった場合には支払わない」などを柔軟に設定することができるメリットがあります。
一方でオリジナルの退職金制度を自社で作るのは難しいケースもあり、社会保険労務士さんと共に考えていくのが一般的だと思います。
就業規則で定める退職金制度で気をつけること
- 労働基準法による就業規則の労働基準監督署への届出等、法令上の義務を履行していないと対象となりません。10人以上の労働者を使用する会社は就業規則を届け出なければなりませんので、退職金制度も該当の場合には届出が必要です。
- 著しく低額で名目的制度に過ぎないものは退職一時金制度導入とはなりません。「退職金を支給する」だけでは認められません。
※神奈川県の手引きより
まとめ
退職金に関する加点も全業種に等しく加算されるので、必ず取りたいところです。
建退共と違ってどの方法を採用するか選択することができます。実際に退職金制度を採用すると当然のことながら、掛金を納める、従業員の退職時に支給するなどのコストが発生してきます。その点も踏まえて自社に合った方法を検討していきましょう。
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