改正案の要点と、これから点数アップ・維持のためにできることを解説していきます。
※令和4年4月現在、まだ【案】の状態で確定内容ではありません。決定された内容をよくご確認のうえ、申請や対策を行ってください。
【令和4年10月24日追記】令和4年8月に公布され、内容が決定しました。それに合わせて、当初の案と異なる点について、記事を変更しました。
改正の視点
次の3つのことが改正の背景となっています。
- 担い手の育成・確保
- 災害対応力の強化
- 環境への配慮
この3つのことに対する取組をしている企業をより評価し、後押ししたい、という狙いがあります。
改正は【その他社会性(W)】のみ
今回の改正は【その他社会性】いわゆるW点の部分の改正のみとなります。
W点は取組に対する加点幅が大きい項目が多いこと、W点が上がると経審を受けている全業種の点数が上がることから、点数アップを考えた時にまず一番はじめに見直したい項目です。
これまではW1~10の10項目で評価されていましたが、改正案ではW1~8項目とスリム化しています。
国土交通省のこちらのページ(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tochi_fudousan_kensetsugyo13_sg_000001_00003.html)の(資料8)に下記ページが掲載されています。
改正①ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する取組
男女問わず将来にわたり建設業の担い手を確保しようという趣旨から、ワーク・ライフ・バランスの取組推進はかなり進んできたと思います。国が行っている認定制度もありますし、それ以外に各行政庁が独自に行っている認定制度も多数あります。(横浜市ですと【よこはまグッドバランス賞】、川崎市ですと【かわさき☆えるぼし】など)
その中で今回経審改正案に入ってきたのは、以下の3つです。
- 女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし):評価の段階あり
- 次世代法に基づく認定(くるみん):評価の段階あり
- 若者雇用促進法に基づく認定(ユースエール)
「えるぼし」や「くるみん」は既に主観点や総合評価点で評価されているところもありますが、いよいよ経審でも始まります。
主観点や総合評価点での加点をきっかけとして、一般事業主行動計画を出されている会社様も多いと思いますが、「えるぼし」や「くるみん」は更にその上の段階の取組です。一定基準を満たし、女性活躍あるいは子育て支援に関する状況が優良である企業を認定する制度です。
制度作りから運用まで、社労士さんと連携しながら進めていくのがスムーズだと思われます。
また、認定段階に応じて加点の差があります。複数の認定がある場合には、最も評価点の高い区分のみで評価されますのでご注意ください。
認定までは時間がかかりますので、早めの取組開始が推奨です。
改正②CCUS導入状況
令和5年度から公共工事に限らず「あらゆる工事におけるCCUS完全実施」を目指す!という以前からの国の方針が背景になっています。
それを受けて下記が加点要件として案が出ています。
- 直近事業年度に施工したすべての建設工事(元請工事に限る)において、CCUS上の現場登録をすること+カードリーダー設置など就業履歴を蓄積するために必要な措置を講じていること
- 直近事業年度に施工したすべての公共工事(元請工事に限る)において、CCUS上の現場登録をすること+カードリーダー設置など就業履歴を蓄積するために必要な措置を講じていること
軽微な工事は除かれます。
①審査基準日(決算日)以前1年以内に元請として請け負った工事が対象
②CCUS上での現場情報登録&就業履歴を蓄積
③誓約書の提出
誓約書の提出+抽出等による確認を行うとのことで、決算変更届で提出する工事経歴書とCCUS上の現場登録情報の整合性を考える段階が来たということになります。
いつからやるか
大事なのは取り組むスタート時点です。
令和5年8月14日以降を審査基準日(決算日)とする申請で適用となります。※この点は案段階からは変更になったところです。
令和4年10月現在、8月決算と9月決算の方は次回経審に間に合わせる場合、既に現場活用を開始している必要があります。
>>【全国対応】ブリジアスではCCUS登録支援を行っています
改正③建設機械の種類
これまで加点が認められていた建設機械に加え、下記が認められるようになります。
- ロードローラ、振動ローラ等(締固め用機械)
- ブレーカ、解体用掴み機等(解体用機械)
- 高所作業車(その他)
- 最大積載量5トン未満のダンプ
弊所の関与先様にもいらっしゃいますが、これまでの加点される種類に該当しないために建設機械から除外していたケースが多々あったと思います。災害対応において活躍している建設機械が認められる方向性となったことは良かったと思います。
それぞれの車両種類に応じた適切な定期検査が必要になりますので、ご注意ください。
改正④環境への配慮に関する取組
環境配慮に向けた取組が以前に増して注目されています。
これまでもISO14001に対して加点がありましたが、中小企業では取得割合が小さいこと、また中小企業ではISOではなくエコアクション21認証を受けている企業も多いということで、エコアクション21も対象になりました。
ただし、ISO14001とエコアクション21の両方がある場合は、ISO14001の方のみ評価されます。
点数のウェイトの話
少し細かい点数のお話です。
これらW点の計算式は、現在(W1~W10までの合計点数)×1,900/200で算出されています。これに0.15をかけた数字が最終的な経審点(P点)に反映されます。
今回、W10まであったものがW8までになるなど一見スリム化なのですが、W点の最大値は【現在】217点→【改正案】237点と増加します。
これをそのままにしておくと、P点全体に対してのWのウェイトが大きくなって、他の項目とのバランスが良くありません。
よって、その解消のために(W1~W8までの合計点数)×1,750/200となる予定です。
これはどういうことかと言いますと、今まで加点になっていた1つの項目当たりの加点が若干ですが小さくなるということになります。
例えば建退共加入の加点についてだと、こうなります。
【現在】(W:15点×1,900/200)×0.15≒21.3点(P点)
【改正】(W:15点×1,750/200)×0.15≒19.65(P点)
つまり営業年数などほぼ自動的な加点を無視して考えますと、まったく同条件だと点数が下がる、ということになります。
したがって、今回の改正にあたっては、新たに盛り込まれた評価項目への取り組みを積極的に行い、W点合計を下げないように検討する必要があります。
経審は基本的に年1回、審査基準日(決算日)に対して行われます。そして多くの発注団体の入札参加資格は2年度ごと。いつまでに何をするのか、いつからその点数が反映されるのか、綿密な調査と計画が必要です。
>>【徹底解説】経審の点数を上げるためにまずは確認したい5つのポイント